最新号 第52号 2015.11
目 次
- 第39回総会・研究大会報告
- 第39回総会議事の報告
- 理事会議事録から
- 第40回総会・研究大会について
- 第7回日本イギリス哲学会奨励賞・選考結果
- 個人研究報告と論文の公募のお知らせ
- 会員の動静
- 事務局より
コンテンツ
第39回総会・研究大会報告
日本イギリス哲学会第39回総会・研究大会は、2015年3月28日(土)・29日(日)、甲南大学岡本キャンパスで開催された。世話人を務められた安西敏三会員および甲南大学のスタッフの皆様に支えられ、大いに盛況であった(参加者76名)。
1日目午前の総会では、会長挨拶、開催校挨拶に続いて、議長に篠原久会員が選出され、選挙管理委員の選出等、各種議事が滞りなく進んだ。また、総会において、第7回日本イギリス哲学会奨励賞の受賞者として、古田拓也会員が選ばれたと発表され、表彰が行われた。そして、総会に続いて、坂本達哉会長による講演「イギリス思想史におけるヒューム」が行われた。
1日目午後には、シンポジウムI「イギリスにおけるモラル・フィロソフィーの展開」が開催された。大久保正健会員・犬塚元会員を司会として、梅田百合香会員、只腰親和会員、川名雄一郎会員による報告とそれに続く活発な質疑応答がなされた。時代と対象を異にする提題者がモラル・フィロソフィーというイギリス哲学のきわめて重要で伝統的な主題をめぐってそれぞれの立場から討議を行うという、当学会ならではの内容の濃い学際的なシンポジウムとなった。また、質疑応答も熱のこもったものとなった。
2日目午前には、8名の会員による個人研究報告が3会場に分かれて行われた。若手にとどまらず学会をリードする研究者も含めて、意欲的な研究成果が報告された。ヒュームの哲学から、近代の分析哲学に至るまで、ヴアリエーションの豊かなものとなった。2日目午後には、シンポジウムII「20世紀イギリス倫理学の再評価一一直観・情動・言語をめぐって」が奥田太郎会員・久米暁会員の司会で行われた。報告者は寺中平治会員、岡本慎平会員、佐藤岳詩会員であった。表題のとおり、20世紀のイギリス倫理学を探るシンポジウムであり、20世紀を代表する倫理学上の古典についてそれぞれ幅広い視点からの密度の濃い報告がなされ、活発な議論が行われた。また、1日目の大会終了後、5号館1階のカフェテリア“パンセ”にて懇親会が開かれ、研究発表とはまた異なる活発な談義に花が咲いた。
第40回総会・研究大会について
第40回総会・研究大会は、2016年3月28日(月)・29日(火)の両日、学習院大学目白キャンパスにて行われます。同大学には、下川潔理事が所属され、大会開催校責任者としてご尽力いただいております。
1日目には、総会、記念講演、シンポジウムI「イギリス哲学研究の21世紀」(司 会:只腰親和、柘植尚則、岩井淳、報告者:神野慧一郎、泉谷周三郎、田中秀夫、坂本達哉)、2日目には、個人研究報告(2会場、5名)、シンポジウムII、(i)「イギリス経験論とは何なのか一「ロック、バークリ、ヒューム」の系譜」(司会:伊勢俊彦、一ノ瀬正樹、報告者:青木滋之、中野安章、田村均)、(ii) ‘Hume on the Ethics of Belief’(司会:渡辺一弘、報告者:Hsueh Qu、萬屋博喜、Axel Gelfert)、(iii)「イギリス思想における常識と啓蒙の系譜:18世紀スコットランドから20世紀ケンブッリジへ」(司会:青木裕子、報告者:片山文雄、大谷弘、野村智清)、(iv)「イギリスの複合国家性と近代社会認識-歴史叙述を中心に-」(司会:竹澤祐丈、報告者:竹澤祐丈、森直人、木村俊道、佐藤一進)が予定されています。
なお、会場、参加申込等の詳しい内容については、2月のプログラム送付の際にご案内いたします。
第7回日本イギリス哲学会奨励賞・選考結果
一ノ瀬 正樹(選考委員長)
2014年9月20日、慶臆義塾大学にて開催されました「日本イギリス哲学会奨励賞」選考委員会におきまして、下記の論文を第7回「日本イギリス哲学会奨励賞」の受賞作とすることに決定いたしましたので、ここに報告申し上げます。
古田拓也(ふるた たくや)
「「事実が与えられているのに、なぜ虚構を探し求めるのか」ーフィルマーの契約説批判とロックによる再構築ー」
(『イギリス哲学研究』第37号2014年3月掲載論文)
本委員会では、『イギリス哲学研究』第37号掲載論文および一般応募論文の中から、奨励賞の資格要件を満たす7編に関して、(1)論述の説得力、(2)論述方法の堅実さ、(3)先行研究への目配り、(4)議論の独創性、(5)将来の研究への発展の可能性等について慎重な検討を行い、古田会員の上記論文が本年度の受賞作にふさわしいとの結論に達しました。
古田会員の論文は、人民と統治者が調停不可能な対立に陥ったとき「誰が裁定者たるべきか」という、フィルマーとロックに共通する問いに対して、「人民が裁定者である」というロックの契約説的解答は、契約説は虚構であると一貫して唱えて「人民が裁定者ならば統治は崩壊する」としたフィルマーの批判にどう答えているのかという、根本的な問題に改めて真撃に対峠したものである。本論文の最大の特長は、ロックに比して軽視されがちなフィルマーの論点を公正かつ丁寧に追いかけ、それがロック的な契約説に対して実はただならぬ迫力で批判を向けていることを明確にしている点である。フィルマーの契約説批判の核心は、契約説の前提する「生来の自由」そしてそれに基づく契約という虚構を認めてしまうと、為政者による契約違反の有無を人民が判定することになり、アナーキーに陥ってしまう、とする点にある。これに対してロックは、まずは、明示の同意と暗黙の同意という独自な同意論の道具立てでもって、統治の源泉を自由な個々人に求める枠組みを提起する。そしてロックは、暗黙の同意を認めてしまうと結局は事実として与えられている既存の支配権への絶対服従を承認することになるのではないかというフィルマーのもう一つの契約説批判に対して、自然法そしてそれを理解する理性能力を前提することによって、絶対服従には至らない、一定の制限内での同意が確保されると応じた。しかし同時にロックは、根底的な次元でのアナーキー現出の不可避性を積極的に認める、と本論文は論じ及ぶ。現代の私たちは、フィルマーのいうアダムの権利を認めることは難しいし、ロックの前提する自然法をそのまま受け入れるのも困難だろう。では、二人の哲学者から私たちは何を学べるのか。そのような問いを挑発的に開いて、本論文は結ばれる。
同意に課せられる制限性が、どのようにして、ある領域内で、既存の支配権に同意したくないけれども単にそこに住み続けたい者の同意に基づく服従と結びつくのか、その点が明瞭でなかったという指摘はあった。しかし、古田論文の、フィルマーに新鮮な視点から光を当てた議論の秀逸さは疑いなく、この分野の今後の発展に大いに資する研究であると評価された。よって、古田会員の本論文を受賞作とすることに決定した。
個人研究報告と論文の公募のお知らせ
各種の公募は、毎年、以下のように行われます。希望者は下記の要領で期日までに申し込んでください。
(A)各部会研究例会報告
申込締切 各部会研究例会の3ヶ月前
報告時間 60分
申込先 各部会担当理事または事務局
*2014-2015年度部会担当理事
関東:只腰 親和、矢嶋 直規
関西:久米 暁、竹澤 祐丈
(B)研究大会個人研究報告
申込締切 9月15日(消印有効)
発表時間 35分、質疑応答15分
レジュメ 1600字以内(題目・氏名・所属を除く)、英語の場合は390ワード以内
申込先 事務局
申込方法 メール(添付ファイル)または郵送
(C)『イギリス哲学研究』掲載論文
申込締切 6月30日(消印有効)
申込先 事務局
申込方法 郵送のみ
公募要領・執筆要領については、『イギリス哲学研究』最新号の「『イギリス哲学研究』執筆に関する諸規定」に従ってください。
なお、応募論文の審査は以下のように行われています。応募論文は、匿名の査読者2名により審査されます。査読者は、編集委員会が編集委員を除く会員のなかから選出し、応募者名を伏せて秘密厳守のうえ依頼しています。よって、応募者名、論文名、査読者名は、編集委員会と事務局以外には非公開となっています。また、編集委員は、応募者にも査読者にもなれません。採否は査読者の審査結果によりますが、理事会において掲載論文を決定後、投稿者に連絡いたします。
事務局より
会費納入のお願い
会費未納の方は、本年12月末までに振込をお願いいたします。年会費は一律6,000円です。なお、2年分(12,000円)以上の未納の場合には、来年3月末の学会誌の送付が停止され、学会役員選挙の選挙権・被選挙権を失います。さらに、5年分(30,000円)以上の滞納の場合には、自然退会となります。くれぐれもご注意ください。
名簿について
別紙でご案内のとおり、来年1月に新しい会員名簿を刊行する予定です。この機会に、同封の「会員情報変更届」にて、もしくは、事務局宛メールにて、最新の情報をお知らせください。また、事務局からご連絡を差し上げるために、最新のメールアドレスをお知らせいただければ幸いです。ご協力のほど、宜しくお願い申し上げます。
退会届について
本学会ではとくに所定の退会届用紙等はありません。退会をご希望の会員の方は、メールまたは葉書き等で退会希望の旨を事務局までご連絡いただくようよろしくお願いします。