学会通信 No. 43
2006年10月25日発行
目次
新会長のご挨拶
第30回総会・研究大会報告
第30回総会議事の報告
第16期役員の顔ぶれと役割分担
理事会議事録から
個人研究発表と論文の公募
第31回総会・研究大会について
会員の動静
濱田義文会員を偲んで 星野勉
学会設立30周年記念事業について
『日本イギリス哲学会30年史』正誤表
事務局より
新会長挨拶
寺 中 平 治
第16期の会長を務めることになりました。何卒よろしくお願いいたします。
この3月の総会・研究大会で、本学会も30周年を迎えました。30周年を記念して、田中秀夫前会長の下に、『日本イギリス哲学会30年史』と『イギリス哲学・思想事典』(研究社)の刊行が計画されました。前者については本年3月に発刊され、皆様のお手許に届いていることと思います。事典については、鋭意編集中でありますが、本学会が総力を挙げて取り組んでいる企画で、来年10月の刊行が俟たれるところです。この事典は、ある意味では、これまでの学会の研究活動のまとめとなると同時に、今後の研究活動の礎となると思われます。
30周年を迎えた本学会の今後の課題は、すでにこれまでも議論されていることですが、イギリスの学会や世界の学会との交流です。本学会の設立に当たっては、イギリスからの働きかけもあったと聞いていますが、その後活発な交流がなされているとはいえません。これを具体化する方策としては、日本人研究者の英語での論文を『イギリス哲学研究』に掲載したり、研究大会時に英語での研究発表を行い、日本の研究水準をイギリスや世界の学会に向けて発信し、理解してもらうことが大事です。今期の編集委員会や企画委員会では、そのような方向に向かっての取り組みがはじまっています。イギリスの哲学界との交流でもっとも望まれるのは、人的交流でしょう。しかしこれは費用の問題もあるので、簡単にはいきませんが、学術振興会等の外部団体の利用が考えられます。イギリス哲学界との交流については、会員各位の積極的な意見をいただければ幸いです。
学会の事務局は、聖心女子大学におき、米澤克夫理事が事務局担当をお引き受け下さいました。また幹事として、聖心女子大学哲学科博士課程の磯部悠紀子および聖心女子大学副手の永野綾子の両会員が就任しました。これまで事務局がおかれていた京都大学に比べれば、聖心女子大学は小規模な大学ですが、哲学科も設けられており、できるだけスムーズに学会の運営が行われるよう努力する所存です。会員の皆様のご指導とご協力をお願いする次第です。
第30回総会・研究大会報告
日本イギリス哲学会第30回総会・研究大会―学会創立30周年記念大会―は、2006年3月27日(月)・28日(火)の両日、早稲田大学政治経済学部において開催された。1976年に本学会創立時の大会も、同じ早稲田大学政経学部で開催されており、感銘深いものがあった。30周年記念と銘打たれた大会は、例年にも増して盛会であった。会場校として、大会の開催や運営にご尽力いただいた、早大の佐藤正志会員、飯島昇藏会員、谷澤正嗣会員、放送大学の山岡龍一会員各位に深くお礼を申し上げる次第である。
第一日目午前中の総会では、田中秀夫会長の挨拶、佐藤正志会員から開催校挨拶があり、次いで飯島昇藏会員が議長に選出され、議事は滞りなく進み、また早大学術院長の藪下史郎教授より歓迎の辞をいただき、総会は無事終了した。
総会の後は、リーズ大学名誉教授であられるWilliam Arthur Speck氏による、"British
Conservatism from Burke to Beaconfield"という題の特別講演が、松園伸会員の司会のもとに行われた。30年記念大会にふさわしい講演であった。午後のシンポジウムTは、「日本イギリス哲学会30周年記念シンポジウム―イギリス哲学研究の現状と展望」という題で、司会者として只腰親和、中才敏郎の両会員、報告者として中釜浩一、押村高、深貝保則の各会員、特定質問者として山岡龍一会員が当たられ、興味ある報告に基づいた活発な議論が、フロアーからの発言も含めて行われた。
二日目午前中の個人研究報告には、9人の会員による研究報告が、9時から3会場に分かれて開かれた。また午後のシンポジウムUは、「イギリス思想におけるプロパビリティ」というテーマで、一ノ瀬正樹、伊勢俊彦両会員が司会で、滝田寧、古賀勝次郎、千賀重義の各会員が報告をおこなった。
第一日目のシンポジウムTの後、午後6時から早大の大隈ガーデンハウスで懇親会が開かれた。名誉会員も30周年を記念して、多数ご参加いただき、学会30年の思い出話を聞くことができ、懐旧談に花が咲いたが、現役会員にはこれからの新たな学会の活動について思いを馳せた方が多かったのではないかと思われる。
第31回総会・研究大会について
次回第31回大会は、2007年3月27日(火)・28日(水)の両日、同志社大学 今出川キャンパスで開催されます。同大学には、深田三徳、濱真一郎、戒能道浩の三会員が所属され、大会開催に向けてご尽力いただいております。
第一日目には、総会、会長講演、シンポジウムT「ジョン・スチュアート・ミル研究の現状と可能性―生誕200年を記念して―」、懇親会が、第二日目には、個人研究報告、シンポジウムU「古典経験論と分析哲学」が予定されています。
会場、参加申込等の詳しい内容は、2月のプログラム送付の際にご案内いたします。
*なお第32回総会・研究大会(2008年3月)は帝京大学(八王子キャンパス)にて開催する了承を得ました。
個人研究発表と論文の公募
各種の公募は、毎年、以下の様におこなわれます。希望者は下記の要領で期日までに申し込んでください。但し、事情により変更の場合もありますので、直前にご確認ください。
(A) 各部会研究例会報告
申込締切 各部会研究例会の2ヶ月前
報告時間 60分
申込先 各部会担当理事または事務局
*2006−2007年度部会担当理事
関東:中釜浩一、山岡龍一
関西:伊勢俊彦、桜井徹
九州:関口正司
(B) 研究大会個人研究発表
申込締切 9月15日(消印有効)
発表時間 40分、質疑応答15分
レジュメ 1600字以内
申込先 事務局
(C) 『イギリス哲学研究』掲載論文
申込締切 9月10日(消印有効)
申込方法 完成原稿(400字詰め原稿用紙50枚以内)と英文アブストラクト(別紙に100語以内)を事務局に送付 ※
※ 応募論文原稿は、原則としてワープロ・ソフトで作成し、印刷されたものを3部提出してください。そのうちの1部には投稿者名を記載し、残りの2部については投稿者名を記載せず、本文や註に投稿者名が判明するような表現も削除してください。
なお、投稿論文は返却いたしませんので、あらかじめご了承ください。
また、審査の結果、掲載が決定した論文については、追って、フロッピー・ディスクでの入稿を求めますので、電子ファイルの保存をお願いいたします。
応募論文の審査は以下のように行われています。応募論文は、匿名の査読者2名により審査されます。査読者は、編集委員会が編集委員を除く会員のなかから選出し、応募者名を伏せて秘密厳守のうえ依頼しています。よって、応募者名、論文名、査読者名は、編集委員会と事務局以外には非公開となっています。
また編集委員は、応募者にも査読者にもなれません。採否は査読者の審査結果によりますが、理事会において掲載論文を決定後、投稿者に連絡いたします。
(学会誌への英語論文投稿に関しては、継続審議中で、結論が出ていません。当分は和文でお願いします。)
会員の動静
入退会承認後会員数
正会員 396名
名誉会員 15名
賛助会員 6法人
計 418名・6法人
濱田義文会員を偲んで 星野勉
2004年9月10日、本学会の会員である法政大学名誉教授濱田義文先生がご逝去されました。享年81歳でした。
先生はわが国におけるカント研究の権威として夙にその名を知られていますが、先生のカント研究の卓越した特徴は、シャフツベリー、ハチソン、マンデヴィル、そして、ヒューム、スミスらのイギリス・モラルフィロゾフィーならびにフランスのルソーの影響関係のもとに、カント哲学をその生成過程から再解釈され、カント・ヒューマニズムの根本精神を解明された点にあると言えます。また、厳格な研究スタイルによるカント哲学の内在的研究、思想史的・概念史的研究に加えて、アーレント、ベイナーらの現代政治・社会哲学に連なる問題関心のもとに、カント研究の枠組みを超える研究を展開された点に、先生の哲学研究の奥行きと同時に広がりを見て取ることができます。
主著は、『若きカントの思想形成』(勁草書房、1967年)、『カント倫理学の成立―イギリス道徳哲学およびルソーとの関係』(勁草書房、1981年)、『カント読本』(法政大学出版局、1989年)、『カント哲学の諸相』(法政大学出版局、1994年)などです。
先生は、大会校を引き受けられるなど本学会の運営に寄与されましたが、ほかにも、日本倫理学会では常任評議員を、日本カント協会では常任委員、会長を務められました。また、熊本大学(1951〜73)では法文学部長、法政大学(1973〜94)では大学院委員会議長、図書館長などの要職に就かれました。
日本イギリス哲学会は、濱田先生の生前のご尽力に感謝し、ここに心から哀悼の意を表します。
学会設立30周年記念事業について
学会創立30周年を迎えての記念事業としては、すでに『日本イギリス哲学会30年史』が2006年3月に刊行されました。もう一つの企画である『イギリス哲学・思想事典』(研究社)は、中項目の事項と人名からなる事典で、2007年10月の刊行を目指して編集中です。
なお30周年記念事業として計画されたものではありませんが、2007年3月発行の学会誌『イギリス哲学研究』も、第30号という記念号になるところから、「最重要なイギリス哲学者は誰か」について、アンケート結果とコメントを掲載する予定です。
事務局より
会費納入のお願い
2006年度分までの会費未納の方は、1月末までに振り込みをお願いいたします。会費は一律6,000円です。
なお今回の会費請求で、2年間未納の方については、学会誌の送付を停止いたします。さらに5年間滞納の場合は、自然退会となりますので御注意ください。
編集後記
本学会は今年3月の総会・研究大会で30周年を迎えたと寺中新会長挨拶にもあるが、この学会通信はNo.43である。年に複数回発行された時期もあったのであろう。仕事の多忙さについ弱音を吐いてしまうこともある事務局としては、先輩諸氏の熱意を煎じて飲む必要があるようである。
今回上記の幾つかの箇所で触れられているとおり、一ノ瀬編集委員長発案になるアンケートが行われるので、返信ハガキが死蔵されることなきよう是非会員諸氏に投函をお願いしたいと思う。どんな結果が出るか、またそれに編集委員長のどんなコメントが付けられるか今から楽しみである。
今回寄稿して下さった方々、編集に協力していただいた方々に感謝を申しあげます。また掲載記事の誤りなどがございましたら、お知らせいただければ幸いです。
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