(部会案内)

関東部会
第71回研究例会


日時: 2003年6月28日(土) 午後1時〜3時

場所: 法政大学 市ヶ谷キャンパス交通案内
         ボアソナード・タワー8階、806教室

報告: 「英学研究の休止の弁」

報告者: 中野 好之 (イギリス哲学会名誉会員)

報告要旨:
世間では職場や私的交際の両面でいずれは定年制が置かれる。私もかねて自分もその時期と考えて、今回40年以上も前の旧訳書の復刊の機会に「古典解釈の意義と将来性」なる短い駄文を草した。半世紀の時の流れで我が国における学問の手法や目的は全く一変したために、老兵は消えるのが筋道である。ただ改めて私は自分の未熟な最初の出版物が現在の第一線の学界の指導者たちに読まれたことを私自身の最高の栄誉と誇りに思う。
現在の大学人が教育や研究に言葉に表せない苦悩を実感している状況で、私の失望と悔恨の種が、古典紹介の事業の行き詰まり、つまり「商売の上ったり」に過ぎないことは、まだしも単純な内情である。一昔前と違って日本での地道な人文研究は、狂乱のようなテレビを始めとする大衆化現象によって、本来辛うじて知的な狭い世界に認められてきた、いわゆる「隙間産業」なる存続の余地をすっかり崩されてしまった。哲学一般の中でもアカデミでは「隙間」だったイギリス哲学の分野においてさえ、私は偶然な経緯でうかうかと特別な隙間を狙って、学界というよりは世間での多少の開拓作業を試みたつもりだが、私の作戦は社会的には失敗に帰したことを自認する。この店じまいを前にした数年間の集中的な家事整理はともかくも所期計画通り達成されたので、それでも私には多少の自己満足感がある。今後の我が国での人文研究の姿について、ぜひ江湖の諸氏の助言や激励を心から仰ぎたく思う。

担当者: 星野 勉(法政大学)
       山岡 龍一(放送大学)

* 関東部会では、報告者を募っています。発表を希望する方、および報告者を推薦したい方は、上記の関東部会担当者にまで、ご連絡ください。ちなみに次回は11月29日を予定しています。