日本イギリス哲学会
日時:2001年12月15日(土)15時-18時第68回関東部会 場所:早稲田大学現代政治経済研究所会議室 包括と寛容−ジョン・ロックの「寛容」をめぐって− 報告者 大澤麦氏 (聖学院大学) 討論者 山岡龍一氏 (放送大学) 太田義器氏 (摂南大学・非会員) 〔報青要旨〕 「寛容」は歴史的な概念であると同時に哲学的な概念である、とよく言われる。事実この概念の探求には、歴史と哲学、双方の観点からのアプローチが試みられてきたが、近年とくに両者の間の懸隔感が増犬しているように思われる。歴史的分析手法をとる研究者と哲学的分析手法をとる研究者の間に、妙な「棲み分け」意識が進行しているのかもしれない。そして、このことは、近年における政治思想の「歴史的考察」の流行と現代リベラリズム研究の隆盛という事情と、おそらく無関係ではないであろう。 本報告は、以上の点を意識しながら、ジョン・ロックの寛容論を17世紀後半のイングランドの宗教政策との連関で検討しようとするものである。当時、イングランドには非国教徒への対応をめぐって「包括」(comprehension)と「寛容」(toleration or indulgence)という二つの考え方があったが、ロックの寛容論はこうした現実への対応の中で構築されていったものである。本報告では、このことに留意しながら、ロックにおける二種類の「寛容」概念をそこから析出してみたい。リベラリズムの関心に触発された現代寛容論は、ロックの寛容論をもっぱら「中立性」ないし「政教分難」という概念で捉まえる傾向にあるが、このような理解が本報告の「寛容」概念とどのような連関におかれるのかという点にまでなるべく考察を広げ、これによって歴史と哲学あるいは過去と現代の対話が少しでも図られる機会にできればと念じている。 間い合わせ:佐藤正志(早稲田大学政治経済学部) 03-5286-1210(ダイヤルイン) E-mail:ssato@mn.waseda.ac.jp |